大人になってしまった、我が家の長女の話。
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子どもの頃の彼女は、怖がりでとても慎重な子でした。
運動会で「よーいドン!」の合図でみんなが走り出しても、まだその場に立ち尽くしている。
「どうしたの?」と周りの子たちに声をかけられている姿を見て、胸が締めつけられたのを今でも覚えています。
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当時の私はまだ20代。
「なんで走らないの?」
歯痒いやらじれったいやら、ちょっとイライラもした。。
今思えば笑い話だけれど、当時は深刻に思いました。
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そんな長女を「少しでも環境に慣れさせなきゃ」と思い、
あるグループレッスンに連れていったことがありました。
でもやっぱり動かない。
みんなが楽しそうに動く中、娘は私のお腹に顔をくっつけてじっとしている。
先生も一生懸命声をかけてくれるけれど、ますます頑なになっていく。
他の子は楽しそうに動いてるのにぃーー!!!と、
端っこに座ってるだけの私はつらくて、親の私こそ、泣きたい気分でした。
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そのときふと思い出したんです。
──私も昔、こんな子だったな、と。
声をかけられればかけられるほど、意地になって動けなくなる。
「できないんじゃなくて、いまはやりたくないの」
そんな気持ち、よくわかる。
きっと彼女もそうだったんです。
でも、動いている子どもたちを見るのは好き。
その気持ちを、上手に伝えられなかったことを思い出しました。
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「待ってあげてくださいね」
今、「音のみるふぃーゆ」に通ってくれている生徒さんの中にも、
同じように慎重な子がいます。
だから私は、最初にお母さんにこう伝えるようにしています。
「聞いていないように見えても、ちゃんと耳で音をとらえています。
いまはまだ“動きたくないだけ”なんです。
だから、お母さん、少し待ってあげてくださいね。」
それは、当時の私が誰かに言ってもらいたかった言葉でもあります。
動かない我が子を抱っこして、端っこで見ているお母さんの気持ちは、
今でも痛いほどわかります。
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先生がそんなふうに声をかけてくれるだけで、
空気はやさしく変わる。
安心して「待つ」ことができる。
その時間こそが、子どもを伸ばす土台になるのだと
20年間の教室運営を通して学びました。
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「待つ」ことが育てる花
待ってくれたお母さんたち。
信じて通い続けてくれた子どもたち。
誰一人として、最後まで動けなかった子はいませんでした。
むしろ、最初に動けなかった子ほど、
大きな花を咲かせています。
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あの子はいま
ちなみに、あの慎重すぎた長女は、いま25歳。
人と関わるのが大好きで、アパレルショップで接客の仕事をしています。
あのとき走り出せなかったくせに、と、つい親の私は思っちゃいます。
“待つことの力”を、
あの子がいちばん最初に私に教えてくれました。



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